SIGA BLOG

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中秋の名月ということで…(イラスト&小説)

 

今日は【中秋の名月】ということで、
月とススキのイラストを描いてみました。

 

自作の中秋の名月イラスト

 

なかなかいい感じだと思います。
お絵描きの所要時間は1時間程度でした。

 

 

  + + + + + + +

 

 

『月ではウサギがお餅をついている』

子供の頃はそんな摩訶不思議なおとぎ話を信じていた。

変な話だと思う。

どう見たってウサギのシルエットなんて見えやしないのだから。

だけど、大人になるまでの間に
サンタクロースが架空の老人であることを知るように、
ウサギがいないことだって自然と理解することになる。

月にウサギはいないし、カグヤ姫もいない。

月は独りぼっちだ。

大人になってから眺める月が妙に綺麗に見えるのは、
自分の抱える郷愁を月を介して眺めているからに違いない。

 

 

――2020年10月1日――

とあるニュースが報道された。

『月のクレーターは隕石の衝突ではなく、ウサギが槌で叩いてできたものだった!?』

実に馬鹿馬鹿しい。

エイプリルフールは半年前だ。

これでは四月馬鹿ではなく、十月馬鹿ではないか。

中秋の名月に乗っかったつもりかもしれないが、全く意味が分からない。

ニュースを消して、寝床に潜り込む。

綺麗な月が見れる日だろうが仕事はあった。そして明日も仕事だ。

ああ……実に馬鹿馬鹿しい。

 

 

――2020年10月2日――

ブルーベリージャムを塗ったトーストを口に運ぼうとして、
手からうっかり落としてしまった。

頭のおかしいニュースが流れていたせいだ。

『月がウサギに破壊された! 今晩からは真っ暗闇!?』

馬鹿は休み休み言えとはよく言ったものだと思う。

こんな報道を連日続けるなんて……どうかしている。

これではフェイクニュースだなんだと騒がれるのも無理はない。

下を見ると、トーストにはジャムがついていなかった。

……着替えとクリーニングが必要だ。

 

 

出社しても耳に入って来るのは例のニュースのことばかりだった。

なんてアホらしい光景だ。

なぜ皆まともに受け止めているのだ。いくつだ君らは。

そのように脳内で愚痴っていると、同僚が件の話題を振って来た。

表現をマイルドにしながらも正直な考えを伝えると、同僚は信じられないものを見たと言わんばかりに口元を歪めた。

それから同僚は思いついたようにスマホを操作して、その画面をこちらへと向けた。

ニュース記事が表示されていた。そこには一枚の画像が映し出されている。

月の直径の四分の一ぐらいの大きさのウサギが、
二本足で立って、槌を振り下ろして月にひびを入れている画像だった。

……。

よくできた合成写真じゃないか。

そう皮肉って返すと、同僚はその記事の一部を指し示した。

『画像出典元:NASA』

はは……これがアメリカンジョークか? ぜんぜん笑えないね。

 

 

二時間程の残業を終えてから、コンビニで幕の内弁当を買ってから帰宅した。

電子レンジで弁当を温めている間に、冷蔵庫から取り出した缶ビールを開けて乾ききった喉へと流し込む。これがなければ数年前には死んでいただろう。

電子レンジが回転を終えるまではもう少しかかりそうだった。

暇潰しにスマホの着信を確認すると、親からの電話が入っていた。

まだ寝ていないか? そう思って、折り返しの電話をかける。

ワンコールで電話は繋がった。

電子レンジから漏れる橙色の明かりをぼうっと眺めながら、話に耳を傾ける。

最初は普段通りに「心配していた」の一言から始まり、そして月の話へと移行した。

……両親もいい歳だからな。すぐにニュースを鵜呑みにしても不思議はない。

詐欺にだけは注意するように口を酸っぱくしているので大丈夫だと信じたいが、この様子だと難しいかもしれない。

聞き流すつもりで話を聴いていると、電話越しの声は酷く狼狽えた様子だった。

月が見えない。スズムシの鳴き声もない。家から一歩出ればそこには暗闇がある。

最初は曇り空のせいかと考えたが、それならそれで雲の輪郭くらいは見えるはずだ。

馬鹿馬鹿しい……そう考えて無視していたが。

……。

窓際へと移動してカーテンを開ける。

背後で電子レンジが鳴っている。

だが、そんなことはどうでもいい。

瞳に映る光景が――家や街灯、信号機、自動販売機の光が――眩しく感じられた。

それほどに、空はくろ……いや、暗闇に染まっていた。

……はははっ!

 

 

 

……おい、誰だ?

 

『月ではウサギが餅をついている』なんて言ったやつは!!

 

 

 

 


あとがき 

 

オチは……ついたかなぁ?

まぁツキはついたので良しとしましょう。(?)

 

思い付きで書いてみました。

最初はイラスト上げるだけじゃあ勿体無いなぁと思っただけなんですが、なんだか奇妙な話に仕上がりましたね。

知っていますか?

着地点を決めないで書くからこうなるんですよ。

はい……ごめんなさいでした。m(_ _)m