「株式会社Cygames」が提供するゲーム「グランブルーファンタジー」は、ソーシャルゲーム(あるいはゲームアプリ)界では、かなりの成功例であると私は考えています。
その理由は多岐に渡ります。
分かりやすい点を挙げるのならば、イラストや音楽、ゲーム内外のイベント等ですね。
それではその全容を……語りません。
無計画に風呂敷を広げても、畳むことができませんので。
今回は【ゲームデザイン(メカニズム*1)】の観点から分析してみたいと思います。
ガチャのデザイン
ガチャを引いて得られるものは 武器 か 召喚石 です。
多くの方は キャラクター 目当てにガチャを引いていると思いますが、本質的にはキャラが
他のゲームでは【キャラクターを直接引くガチャ】が多いと思います。
そして、キャラが被ったときには【限界突破】素材的な何かが手に入ります。
このシステムの場合、キャラを最大限育成したくなった時、そのレアリティが高い程、課金をしないと難しい状態になります。
つまるところ、キャラへの愛着を全力で表明するためには、貢ぐことになります。
RPGなどの育成ゲームでは、キャラを育てて成長させるという行為が、最も分かりやすく愉しい要素です。
「=モチベーション」と言っても過言ではないでしょう。
キャラを育てるにあたって、プレイヤーが納得し難い障害(重たいストレス)が存在すれば、モチベーションを失い、ゲームから離れていくのは自然の摂理です。
結果として、課金者は残るので運営は継続できますが、アクティブ人口が減少するので、賑わい・活気も連動して下がっていきます。
そうすると、新規参入者が増えづらくなるので、サービス終了への緩やかな下り坂を歩むことになるでしょう。
ただし、これはあくまで一面から見ただけの話でしかありませんので、サービスが順調に継続しているということであれば、他面で問題解消、あるいは十分に愉しめるようになっているのだと思います。
※この枠内は、他のゲームについての話でした。しかし、この内容を踏まえておくと、後述の内容が理解しやすくなると思います。
キャラクターの育成デザイン
グラブルでは、課金・非課金に依存せず、好きなキャラを最大限に育成することが可能です。
お目当てのキャラが引けない場合もあるとは思いますが、しかし、上限解放に必要な素材はキャラに依存しませんので、何度も引き当てる必要がありません。
なお、キャラの強さについては、環境の変化、性能の調整、コンテンツの追加などが発生することもありますので、あまり気にしすぎないようにするのが賢明だと思います。
また、キャラの育成は、十天衆のような一部の特殊なキャラクターを除けば、面倒な要素は特にありません。
つまり、ゲーム内で最もとっつきやすい要素なのです。
ちなみにキャラの育成が終わったらどうなるのでしょう?
やることがなくなって飽きてしまうのでしょうか?
違いますよね。 皆さんがご存知の通りです。
そう、これがグラブルの大きな特徴です。
グラブルでは、根本的な強さ(ステータス)が武器や召喚石の編成に大きく依存するという、一風変わったゲームなのです。
今ではそういうゲームも増えて来たかもしれませんけれど。
だからこそ、キャラ育成はシンプルなんですね。
ちなみにゲーム内では様々なところで、複雑怪奇な仕様が見受けられますが、それらはおそらく、グラブルのゲームデザインメカニズムの指針から生じています。
それが理解できると、仕組みづくりのロジックを垣間見ることができます。
武器と召喚石の育成デザイン
前置きですが、編成システムはとても煩雑です。
よってこの場では、育成デザインのメカニズムにのみ触れていきます。
スキルレベルもノータッチです。
下記の項目を追っていくことで、そのメカニズムを解析していきます!
武器・召喚石を4凸以上にしたい!
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素材の要求
┗ 多種多様なトレジャー …①
┗ 大量のトレジャー …②
▼
主にクエストで収集
┗ 1日の回数制限があるクエスト …③
┗ 自発素材が必要なクエスト …④
素材の要求
①多種多様なトレジャー
4凸以上の上限解放を行いたい場合、ここで多種多様なトレジャーを要求されます。
3凸までは同じ武器や召喚石を重ねれば良かったのに対して、なぜ4凸からはそうなってしまうのか?
ハードルを課すことによって、プレイヤーに対して遠回しに、ある仕掛けを施しているのです。
次項②でまとめて説明します。
②大量のトレジャー
大量のトレジャーを要求されるのにも理由があります。
プレイヤーはトレジャーを入手するために、各種クエストを回り、ドロップを狙う。
▼
どのトレジャーも、クエストの難易度に関わらず、挑戦回数が必要。
▼
周回プレイを行うため、結果的に、長時間のプレイが必要。
しかし、1日は24時間、有限です。
例えば、30個が必要個数だとした場合……
1日のプレイ時間の中で集められるのが3個までだとすると、
集めきるまでに10日以上かかります。
'ゲーム廃人であれば別ですけれど
そうです。
これが遠回しな仕掛けであり、長期間のプレイを求めるデザインです。
ガチャのデザインの項にて語りましたが、継続して遊んでもらうということは、ソーシャルゲームにおいては重要なことです。
付け加えて、継続して遊んでもらえれば、その間に新しいイベントがあったり、新しいコンテンツができたり、UIまわりが更新されたりして、更に更に継続して遊んでもらえる可能性が生まれるのです。
ちなみにプレイヤー側としては、その中で周回対策として、クエストごとに最適な編成を考えるという遊びができます。
主にクエストで収集
③1日の回数制限があるクエスト
クエスト側での仕組みとして、一部クエストには1日の挑戦回数制限が存在します。
こちらは単純明快ですね。
長期間のプレイを求めるデザインである、ということは前項①~②と同じです。
ただし、こちらは直球です。
だからこそ、休日に「一気に消化するぞ~!」という考えを許してくれません。
ちなみに、これら①~③のメカニズムには、他の目的もあります。
資金力に物を言わせて、ガチャで強い武器・召喚石を引こうとも、それだけでは鍛え切ることができない、という一面を生み出しています。
強さの優劣を図式にすると……
'(絶対じゃないよ!)
× 課金プレイヤー > 非課金プレイヤー
〇 毎日こつこつ長期的に遊んでいるプレイヤー > あまり遊んでいないプレイヤー
という構図です。
④自発素材が必要なクエスト
さらに一部のクエストでは、自発素材が必要となっています。
これについてはあまり確信を持ってはいないのですが……。
プレイヤー間に存在する、レベル差という障害を、なるべく取り除くための方策、ではないでしょうか。
どうしてその結論になるの?
こんな疑問を抱くと思いますので、かなりざっくりとした例え話をします。
【Lv100のプレイヤー】と【Lv50のプレイヤー】がいる。
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【Lv50のプレイヤー】がもっと強くなるためには、『Lv51以上の敵』を倒す必要がある。
▼
【Lv50のプレイヤー】が集まっても、『Lv51以上の敵』を倒すのは難しい。
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【Lv100のプレイヤー】は『Lv51~99の敵』を倒しても強くはなれないので、無意味には戦わない。
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この状態だと【Lv50のプレイヤー】は『Lv51以上の敵』を倒せないため、ゲームを遊び続けるモチベーションが低下する。
これを解消するには……。
【Lv100のプレイヤー】が、『Lv51~99の敵』を倒す理由を作る。
▼
それがこの自発素材消費システムである。
こんな感じではないでしょうか?
実際、自発素材が必要なマルチバトルの多くは、下位のマルチバトルでドロップするトレジャーを消費しますので、的外れってことはないと思います。
以上 で、【武器と召喚石の育成デザイン】の解析は終了です。
グラブル学の履修、お疲れさまでした!
でも……もうちょっとだけ続くんじゃよ。
デザインメカニズムのセンス
ここまで読んでいただいた方には理解していただけたと思いますが、
「アーカルムの転世」
「十天衆の取得・上限解放」
「特殊武器の製作」などなど……
ゲーム内の様々な場面で、このデザインメカニズムが読み取れます。
このような視点を意識すれば、デザインメカニズムが甘いゲームを見抜くことができるかもしれませんし、あるいは、自分が何かを製作する際に、糧となるかもしれません。
また、以前に古戦場の記事(【グラブル】古戦場ではどんな報酬があるの?)で少しだけ触れましたが、グラブルは素材交換が多すぎて、コンテンツを走破した見返りが何なのかが非常に分かりづらいのが難点ですね。
グラブルというゲームは、本記事のようなメカニズムを意識して作られているが故に、分かりづらいと思う瞬間がどうしても付き纏います。
複雑さはゲームを面白くする要素である一方で、ストレスを与える要素でもあります。
プレイヤーに適量のストレスを与えることは大切ですが、同時にストレスの与えすぎも良くないです。
その辺りを考え出すと、万人に適したセンスなんてものは存在しません。
しかし、それでもどうにかこうにか向き合って、少しでも良くしようとすることが、作り手には求められているのかなあ、などと思っています。
私も一応、作り手側の行為をしていますので、すごく頭が痛いのですが……。
大変ではありますが、この永遠の課題と対決し続けることで、ずっと楽しんで貰えるコンテンツで在り続けられるのではないでしょうか。
まとめ
▷ 全ての根幹は育成要素!
▷ 育成要素は3つ! 「キャラ」「武器」「召喚石」
▷ キャラ育成はとてもシンプル
▷ 「キャラ」はプレイヤーのモチベーションに重要!
▷ 「キャラ」は誰でも最大限まで育成可能
▷ 「武器」と「召喚石」の育成は最初はシンプル、後で複雑化する。
▷ 複雑さは、プレイヤーに対して仕掛けを施すため!
▷ 様々なデザインメカニズムによって、
グラブルというコンテンツが長く続けていけるようにできている
以上です!
しかし、考えてもみたら、育成要素には主人公のジョブもありました。
そこまでは頭が回っていないので、ここまでにさせてください……
『グラブルのゲームデザイン(メカニズム)を読み解く』でした。
画像出典:©Cygames,Inc.
*1:メカニズム=機構=仕組みや内部構造のこと