人間という種族は、実に愚かな生き物です。
文明を築く力を持っていながら、自分たちで作り上げたそれを掌握することができません。
だからと言って、人類に改善や進化を求めたところで、実に無意味です。
なぜなら、人間の能力は根本的に不足しているからです。
人間は、作品そのものを評するのが苦手です。
人間は、他者の内面を読み取ることが苦手です。
人間は、決められていないことを知るのが苦手です。
一部の優秀な人間ですら、
そして、そんな世界を作り上げたのも人間です。
暴力によって形づくられた秩序ではないだけ、まだマシなのかもしれませんが。
オシャレだと思われたい人間は、有名ブランドのロゴが入った服を着ます。
そこに、本当の美しさがあるかどうかは関係ありません。
自分のセンスも、自分の好みも、そこにはありません。
ただ、虎の威を借りたいだけの狐です。
値段が高いという理由で絵を買う資産家みたいなものです。
美術品を鑑賞する際に、当時の時代背景が重要であることは当然です。
しかし、誰が作ったかで価値を決めるのは、後世の人間の愚行です。
多くの人間は、芸術や文学を理解する術を持ちません。
だからこそ、作者の名前、作者の背景をアテにします。
数の暴力によって、美を娯楽に置き換えてしまいます。
人間は、分かりやすい仮初の美しさばかりを求め、本当の美しさは求めないのです。
美しい作品を作るのは本当に難しい。
人間に、社会に、人の身を越えた能力を期待することが間違いなのです。
非常に腹立たしい事実ではありますが、現世で本当の美しさを欲するのであれば、確かなしたたかさが必要なようです。
本当の美は仮初の中に……娯楽の中に潜ませねばいけません。
理想のために、歯を噛みしめる。
そのような苦痛を乗り越えねばならないのですから、息苦しい、もとい、生き苦しいですよ。
……。
だからこそ、人は美しさを求めるのでしょうね。
考えた事を言葉にしてみたら、妙に刺々しくなってしまいました。どうにも理想ばかりが高くて、それでも理想を欲してしまって、そのギャップに打ちひしがれて……。知能の高さ故にかえって自分の首を絞めるあたり、やはり人間は愚かしい生き物です。